オチのない怪談ブログ

自分が体験した、あるいは誰かから聞いたオチのない怪談を蒐集するブログ

霊感がある母親②

「同じ夢を毎日見るのよ」

 

と母が言う。

 

どんな夢?と聞くと、

布団の上で左目に眼帯をつけた老人が「殺してやる、殺してやる」と恨み言を言い続ける、という気味の悪い夢だった。

それだけの夢なのだがさらに気味の悪いことに、その老人に見覚えがある。

 

交流は全くないものの、顔見知りの近所に住む老人であった。

寝たきりということだったがまだ存命だ。

 

老人の、誰かに対する深い恨みを何らかの形で受信しているようだった。

 

 

とは言え何もすることはできない。

気味は悪いが夢に見るだけだから、と放っておくことにした。

 

そんなある日。

不要になったガスボンベのガス抜きをしている際に、ガスボンベの蓋が暴発し、母親の目に当たって怪我をしてしまった。

老人が眼帯をしている左の眼だった。

 

 

 

 

これは放っておいたらまずいものだ、と直感的に感じた母はお祓いを受けることになった。

 

自分も同席することになる。

 

霊媒師がお経か何かを唱えている時、隣の母も目を閉じて一心にブツブツと何かを唱えている。

 

母もお経を唱えられるんだ、と感心しながら耳を澄ませていると

 

 

 

「殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる」

 

母はそれだけを延々と呟いていた。