年の暮れ。
忘年会でしこたま飲んだ兄から「迎えにきてくれないか」と電話があった。
すでに時刻は2時を回っていたが、他に頼む人もいないのだろう。
しぶしぶ車を出すことにした。
兄と兄の友人二人を乗せ、夜の道を走る。
すると、横からヘッドライトに向かって垂直に交わるように、黒い影が走ってくる。
ぶつかる、と思った瞬間ライトに溶けるように影は消えた。
今のはなんだったのだろう、と思う間もなく今度は反対から、
同じように影が走ってくる。
全く同じことが、3、4回続いた。
だが兄の友人を家に送り届けてからは、ぴたりと影は現れなくなった。