大学時代のバイト先の店長から聞いた話。
若い頃、友人数名で遊び半分で青木ヶ原の樹海に向かった。
鬱蒼としげる森の中を車で走っていく。
すると前方にやたらゆっくりと走るボロボロの車があることに気づいた。
追い越しできるほどの道幅がなかったため、イライラしながら車間をつめる。
ようやく道幅が広くなってきたので、徐々にスピードを上げて横から追い抜くことにした。
ゆっくりと車を追い抜く瞬間、車内の1人が声を上げた。
「おい、向こうの車見てみろ!」
その声に促され、隣の車に目をやる。
長い髪を垂らした女が、まっすぐ前を向いて運転していた。
その髪の下には、顔の形がわからないほど大小様々な「デキモノ」でボコボコに変形した顔があった。
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すでに生きた人ではなかったのか、死にに来た人間だったのかは、わからなかったという。