「早くお風呂に入りなさい」
一階のリビングから母の声が聞こえてきた。
三人兄弟の末っ子だった彼は、二人の兄に遅れて階段を降りる。
子供の頃、三人で一緒にお風呂に入るのが日課だったのだ。
脱衣所のドアを開けると、曇りガラスの向こうに人影が見える。
シャーーーという、シャワーの音。
自分も早く風呂場に入らなければ、と服を脱いでいると、先に階段を降りていった兄たちがドヤドヤと騒ぎながら脱衣所のドアを開ける。
…じゃあ風呂場にいるのは誰?
恐る恐るドアを開けると、シンッと静まった風呂場にはもう誰もいなかった。