妻の体験。
悪夢を見ていた。
なぜか数人でリアカーに荷物をたくさん載せて夜逃げのようなことをしている。
自分は少し遅れて、あとから出発する。
すると先に出ていった人たちは跡形もなく消えており、リアカーだけが横転している、という夢だ。
その場面で嫌な気配を感じて目が覚めた。
その視線のまま天井を見ると、肘から上の腕が一本、すっと暗闇の中に浮いている。
腕には大きな湿布のようなものが貼られていた。
思わず視線をそらし、もう一度天井を見上げると、もう腕はなかった。
だがなぜだか夢のことが頭を離れない。
何げなく視線を居間の方に向ける。
当時の家は寝室と居間が引き戸で仕切られているのみで、普段引き戸は開け放していたままだった。
その開け放した引き戸から、居間に大きな男の顔がぷかぷかと浮かんでいるのが見えた。
天井に浮かんでいた腕と、居間に浮かんでいた男の顔は同一のものだったのか。
だとしたら何の目的で、二回に分けてで出てきたのだろうか…。