今はもう取り壊されている築100年以上あった、古民家で起きた小噺集
・夜寝ていると、父親の声で玄関の方から名前を呼ぶ声がする。
鍵を忘れたのか、と思いドアの前まで行くも人の気配はない。
父親に「今帰ってきてた?」と電話すると、「まだ仕事中だ」と電話を切られた。
・真夜中、風呂場の方からざっぱーーん。ざっぱーーん。と音がする。
こんな深夜に誰が、と思い風呂場に行くと誰もいない空っぽの風呂桶があるのみである。
・古い木棚のてっぺんに手形がついているのに気づいた。
ハシゴにでも登らないと、つけられない場所だった。
・なんの変哲もない、日本人形の髪が明らかに伸びてゆく。
古民家が取り壊され今住んでいるマンションに越して来た頃から
髪が伸びることは、もうなかった。