子供の頃祖父から聞いた話。
祖父の友人は出先で起きた火事で奥さんを亡くしてしまった。
痛ましい事故からしばらく月日が経った、ある夜のこと。
一階にある寝室で寝ていると、カーテンを「シャーッ……シャーッ…」と繰り返し開け閉めする音がする。
何度も何度も繰り返し聞こえるため流石に気になって確認に行く。
暗い階段をぎしぎし上がっているその時も、カーテンを開け閉めする「シャーッ…シャーッ…」という音は続いている。
意を決して二階のドアを開けると、唐突に音が止んだ。
カーテンは閉じられたままで、部屋には誰もいない。
首を傾げながらドアを閉めるとまた、シャーッ…と音がする。
もう一度ドアを開けると、カーテンのそばに亡くなった奥さんが生前召していた着物を着て、立っていた。
だが着物からのぞく首から上は、真っ黒な影のようになっていて見えなかったという。
焼死という亡くなり方をしたため、顔を見せることが出来なかったのだろうか。