オチのない怪談ブログ

自分が体験した、あるいは誰かから聞いたオチのない怪談を蒐集するブログ

先客②

温泉旅館に泊まった時のこと。

 

大浴場に向かい、更衣室に入るとガランとしている。

ロッカーの鍵が閉まっているのは一つだけ。

先客は一人だけのようだ。

 

浴室に入ると曇りガラスの向こうに露天風呂につかっている背中が見える。

他に誰もいないのに露天風呂で鉢合わせるのも気まずかったため、内湯で時間を潰す。

 

だが、いつまで経っても先客が出てこない。

流石にのぼせてきたので、露天風呂の方に向かうことにした。

 

 

 

露天に続くドアを開けると、露天風呂には誰も入っていない。

露天のドアをずっと眺めていたので、人が出てきたら必ず気づくはずだ。

気になってサウナや他の場所を探したが、曇りガラスの背中の主はもうどこにもいなかった。

 

 

帰り際更衣室のロッカーを確認したが、相変わらず鍵は一つだけ閉まったままである。

 

先客①

「早くお風呂に入りなさい」

 

一階のリビングから母の声が聞こえてきた。

三人兄弟の末っ子だった彼は、二人の兄に遅れて階段を降りる。

子供の頃、三人で一緒にお風呂に入るのが日課だったのだ。

 

脱衣所のドアを開けると、曇りガラスの向こうに人影が見える。

シャーーーという、シャワーの音。

 

自分も早く風呂場に入らなければ、と服を脱いでいると、先に階段を降りていった兄たちがドヤドヤと騒ぎながら脱衣所のドアを開ける。

 

…じゃあ風呂場にいるのは誰?

 

恐る恐るドアを開けると、シンッと静まった風呂場にはもう誰もいなかった。

魑魅魍魎

子供の頃、祖父の家に泊まりにいった時のこと。

その夜は一人で祖父のベッドを借りて寝ることになった。

深夜ふと目が覚めて、「今何時くらいかな」と枕元の時計を見ると。

 

 

時計から蛇やカエル、ムカデ、蜘蛛他様々な動物や蟲が、ブワッと大量に飛び出して来た。

 

咄嗟に目を閉じて開けると、跡形もなく消えていた。

銀色の球体

・通勤中の車内にて

とてもよく晴れた朝、車でいつもの道を職場に向かっていると空に銀色の球体が静止している。

どうみても飛行機ではない。

一点から微動だにせずに浮かんでいる。

 

信号待ちの時にそうだ写真を、とスマホを取り出そうとして再び見ると、跡形もなく消えていた。

 

 

・マンションのベランダにて

20年以上前の話。

ベランダから何気なく夕暮れの空を眺めていると、銀色の球体が空に静止している。

しばらく眺めていても微動だにしない。

写真を撮ろうとカメラを撮りに行っている間に、跡形もなく消えていた。

 

 

 

全く同じものを、違う人物が、全く違う場所、時間で見た話。

通り過ぎる

夜寝る前に二階の吹き抜けから電気の消えた一階を見下ろしながら、子供のトイレを待っている。

子供がトイレから出てきて、ふざけて

一階に向かって「はーなこさーん遊びましょー!」と言った。

 

 

その瞬間壁の方から黒い影がスッと出てきて、風呂場の方へ抜けて行った。

 

 

何も見なかったことにして、子供を寝かせた。

「昨日ね、幽霊を見たの」

とあるカフェにて。

「昨日ね、幽霊を見たの。 

頭は毛が生えてなくて、長いコートを着ていてね。

半透明で向こうの景色が見えていたんだよ。

気持ち悪かったのは、眼だね。

握りこぶしくらいの大きな眼が顔の半分くらい占めててさぁ。

それが近づいてくるからーーー」

 

「怖いから、もういいよ!!」

 

 

そこで話は終わった。

後ろの席で本を読むふりをしながら聞き耳を立てていた私は「続きを聞かせてください」とは、到底言えなかった。

短怪談⑤

・ベタな幽霊

雨の日の深夜車を走らせていた。

急な上り坂になるところで車が減速すると、

歩道を白いワンピースを着てランドセルを背負っている少女が傘もささずに歩いているのが見える。

こんな時間に?と振り返ると、誰もいない。

ずいぶんベタな幽霊を見たな、と思い家路を急ぐ。

 

・どうでもいい正夢

しこたま飲んだ後、3人で夜の自然公園を歩く。

自転車のライトを灯りにして、池の周りの木道をコツコツと歩いた。

いい雰囲気だったので

「デジカメ持ってくればよかった」

と呟いた瞬間、全く同じ状況の夢の中で同じ言葉を呟いたことを唐突に思い出す。

危機を回避したり、宝くじがあたる正夢が見たかった。

 

・入れ替わり〜記憶の怪談

幼少時代、某国民的男性アイドルのメンバーの一人の顔が、ある日突然変わった。

名前は同じなのに顔が明らかに違う。

その日から、彼は過去の映像の顔も、全て新しい顔に置き換わった。